今回の記事では、スパイスの中でも最も希少性が高いと言われているスパイス・サフランについて解説していきます。
目次
サフランとは
英語表記 Saffron
和名 番紅花
サフランはアヤメ科の球根植物で、紫色のとても美しい花を咲かせます。
おしべとめしべが3本づつ花弁から生えており、めしべを乾燥させてものが、一般にスパイスのサフランとして市場に流通しているものです。
スパイスの中でも価格がもっとも高く、その価格の高さはごく少量しか抽出できないということからきます。
めしべだけを花弁から取り出してザルの上に広げて12時間以上乾燥させますが、赤色と黄色が混ざった色のものが最高級品と分類されているものになります。
1gのサフランを採るために160個の花が必要とのことですので、希少性が高く高級になってしまうということもうなづけますね。
現在の主な原産地はイランで、世界生産量の90%が生産されています。
その他にも、スペインやモロッコなどの地中海沿岸、ギリシャ、インドのカシミール地方などで生産されています。
サフランの歴史
紀元前2300年頃、地中海東岸にあるメソポタミア最古の都市・アッカド帝国で、すでにサフランが栽培されていました。
アッカド帝国には ’Azupiranu’ という都市があり、その意味は ‘サフランシティー’ を指す語だと言われています。
時代が遡って、紀元前1600年頃のギリシャの壁画にもその栽培の様子が描かれており、その後、紀元前600年頃のアッシリア王帝国の時代の文献にもサフランの記述があります。
古代エジプト文明の記録においては、クレオパトラがその美貌を保つために、ミルク風呂に入れる入浴剤としてサフロンを重用していたとの記述もあります。
古代ギリシャ・ローマ時代になると、皇帝の為の食事や薬の材料としても扱われ、また、その香りの良さから、宮廷の中庭や風呂にも敷かれていたとのことです。
中世になると、アラブのスパイス商人がスペインにサフランを運んだことからヨーロッパに広がり、現在でもスペイン料理では多用されているスパイスの一つとなっています。
その希少性からなんと偽造をする悪徳業者もいるということで、サフランに似た他の植物を混入してかさ増しをしたりと、そのスパイスの長い歴史においても、交易が始まった中世から現在に至るまで偽造との闘いが常に繰り返されています。
サフランの香り 効用
とても希少性が高くアロマオイルとしても抽出されたりしていますが、その香りは独特で好みが分かれるとも言われています。
上品なムスクの様な香りがあるという人もいれば、土の香りがするので干し草の様な香りがすると例えられることもあります。
世界中の香水ブランドがサフランのエキスを使った香水をリリースしてますので、日本人には好みが分かれるところですが、外国人にはとても人気のある香りです。
ペルシャ時代にうつ病を治す効果があると信じられていた通り、不安障害などに効き目がああり、女性にとってはホルモンバランを整えるという効果もあると言われています。
また、脳にも働きかけ、学習や記憶の向上に効果があるともされています。
抗酸化作用もあるので、アンチエイジング用のエキスとしても使われています。
また、染料としても最高級品として扱われており、位の高い仏僧はサフランで橙黄色に着色された僧衣を着用していたとのことです。
サフランの味と使われている料理
味には多少の苦みがありますが、奥行きのあるとても複雑な風味を持っています。
刺激と酸味も多少ありますが、それほどは強くありません。
料理に使われる一番の目的として、食材に着色するという効果とその風味付けが大きいですね。
パエリア
サフランが使われている料理として一番有名なのがパエリアではないでしょうか。
スペイン、バレンシア地方の料理で、肉、魚介、野菜などを具材としたスペイン版「炊き込みご飯」です。
その黄金色のご飯が特徴的で、事前にサフランを水に浸してサフラン水ができ、その水で炊き上げることによって綺麗な黄金色になります。
ビリヤニ
こちらも炊き込みご飯ですが、インドのカレー風味の炊き込みご飯で、色づけにサフランを使います(ターメリック(うこん)で代用するレシピもあります)。
カレーのスパイスと、インドのお米で細長い形をしたバスマティライスの相性がバツグンによく、出来上がった後にヨーグルトと混ぜて食べるのがインド流です。
タジン鍋で作る料理
タジン鍋は、主にモロッコで使われている鍋で、肉や野菜を蒸し煮する調理器具です。
現在の日本で認知度を増してきた、水を使わずに食材から出てくる水で煮る調理方法「無加水調理」ができる元祖のような鍋です。
食材そのものから出る水で蒸しながら煮るので、食材の栄養素をそのまま閉じ込められるというヘルシーかつ健康に良い調理方法ということで脚光を浴びてきています。
モロッコではタジン鍋を使って、野菜と鶏肉や羊肉をゆっくりと低温で蒸し煮にして、その風味と色付けとしてサフランが使われています。
ビスクやブイヤベースなどのスープ
ビスクは、フランス生まれのカニやエビなどの甲殻類を使ったスープです。
甲殻類を皮ごと裏ごしをした後に最後にクリームを入れて仕上げる、魚介の旨味たっぷりのクリーミーなスープです。
ブイヤベースもフランスのスープですが、こちらは裏ごしせずに、魚介と香味野菜を煮込んで作るスープです。
どちらもサフランで風味と色付けをするので、とても鮮やかな色合いを持つ料理です。
サフランアイスクリーム
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イランには、サフランで色を付けた牛乳から作られたアイスクリームがあります。
黄金色がとても美しく、世界的にも評価されているスイーツです。
最後に
今回の記事ではサフランについて解説させて頂きました。
希少性が高く、スパイスの中では間違いなく最高級の部類に入るものです。
では、次の記事では、サフランが使われているジンを紹介していきたいと思います。
また、他のスパイス&ハーブについても解説しておりますので、下記一覧のページからチェックしていただけるととても嬉しいです。