さっとんブログ スパイスカレーとクラフトジン生活 
~最高のペアリングを求めて~
蒸溜所レポ

SDGsに対する企業理念が凄すぎる! 『棘玉ジン』を製造する武蔵野蒸留所さんを見学させて頂きました。

さっとん
さっとん
こんにちは。ジンラバーさっとんです。

現在、世界中の企業が企業理念として意識していて大きな流れとなっている「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」。しかし、その言葉が世界的に広がる以前から持続可能な循環経済を目指し、埼玉県唯一のクラフトジンを製造している企業があります。

それが、『棘玉ジン』を製造している「株式会社マツザキ」(以降、マツザキ)さんです。同社は埼玉県川越市に本社を構え、クラフトジンを製造する蒸留所「武蔵野蒸留所」を設立し、地域に密着しながら循環経済の実現を実践しています。

今回の記事では、そんなマツザキさんの蒸留所を見学して、その会社理念も色々と教えて頂きましたので、その事業内容と『棘玉ジン』についてご紹介していきたいと思います。

なお今回は、同じくジンラバーのさっとん嫁(コテコテの大阪人)も同行しております。

株式会社マツザキと武蔵野蒸留所の歴史

写真左:代表取締役 松崎敦雄さん 右:専務取締役 松崎裕大さん

創業はなんと明治20年。地域に密着した酒類やお米の販売店として始まりました。松崎家代々にその事業が受け継がれ、現在では親子二代で経営をされています。1989年に法人化し現在の株式会社マツザキ(以下:マツザキ)を設立。日本酒やワイン等の酒販店として地元に愛されながら、川越駅前にバーも出店されています。

2019年には、『棘玉ジン』を製造する「武蔵野蒸留所」を設立しました。

お2人が棘玉ジンの構想を考えられたのは10年前とのことで、現在のジンブームが巻き起こる以前からジンを好きで飲んでいて、ジン作りの計画もしていました。

現在の日本にクラフトジン蒸留所設立のブームが巻き起こってますが、元々日本酒や焼酎の酒蔵がクラフトジンを作り始めたり、コロナ禍で消費が少なく利賞味期限切れになりそうなビールを蒸留してクラフトジンに生まれかえさせるといった、お酒造りをしていた会社がジン造りにもすそ野を広げたということが多いように感じます。

しかしこの棘玉ジンについては、酒販店が酒造りを始めるというかなり珍しい流れではないかと思います。お酒選びのプロが酒造りを始めて、その第一弾として、昔から愛飲していたジンを選んだという、これは美味しくなる予感しかないじゃないですか!

時代を先取りしていた!!以前からSDGsを実践していたマツザキの経営理念

個人的に本当に素晴らしいと感じたのが、マツザキの経営理念です。地元川越に密着しながら、現在世界的な潮流となっているSDGsを実践されている本当に素晴らしい企業です!

では、その素晴らしい活動内容をご紹介していきます。代表取締役の松崎敦雄さんに色々教えていただきました。

マツザキの森

マツザキ本店と武蔵野蒸留所のすぐ側には「マツザキの森」と名づけられた森があります。ここで木を育ててその木材を家を建てる時に使ったり、ジンに使われるボタニカル(風味付けの素材)の苗を植えて育てられたりしています。

松崎社長
松崎社長
私達の先祖が森にある木を使って家を建てたり、薪にしてお風呂を炊いたり炭にしたりしていました。木は切ってもまた生えてきて20年くらいで大きくなるので、植樹する必要が無いんです。現在でも、子供たちに木材で木工の体験をしてもらったりと、グルグル循環をさせていてSDGsに基づいて活動しています。
嫁
そんな昔から実践してたんですね!先見の明が凄すぎる!
松崎社長
松崎社長
“現在ではまだ少量ですが、苗から木に育って実をつける数年後には、マツザキの森で育ったボタニカルを中心に使用してジンを作っていけるようにします。

緑化活動を進めつつ、そこで採れた素材を元に自社製品を作る。この取り組みは、埼玉県の緑化保全活動の賞も受賞されました。本当に、SDGsを体現している素晴らしい方針ですね!!

森にジュニパーベリーも植えている!

これがかなりの驚きポイントですが、マツザキの森ではジンの原料としては無くてはならない「ジュニパーベリー」が育てられています。なんと、ジン作りを考えていた10年前にジュニパーベリーの苗を植えたとのこと!

松崎社長
松崎社長
ジュニパーベリーを栽培している農家はほとんどなくて、我々が10年前に見つけたのは、長野の山奥に自生しているものを植木屋さんに採って来てもらったんです。
嫁
先見の明が凄すぎる!!
さっとん
さっとん
凄いなー!!
松崎専務
松崎専務
今の所、少ししか取れないのでジンにはちょっとだけ入れていて後は輸入のものにしているのですが、年々収穫量が増えていけば、ジンに入れられる量が増えてくると思います。

日本では、ジュニパーベリー農家は本当に少なく、ジャパニーズクラフトジンは海外産のジュニパーベリーを使って作られている状況です。現在の棘玉ジンに使われている自社栽培のジュニパーの量は少ないのですが、将来的には全てを自社で賄うとのこと!それもそこまで遠い未来とは思えないので、棘玉ジンは日本初の国産ジュニパー100%ジンになる可能性があるのではないでしょうか!

そして、『棘玉ジン』の名前の由来ですが、ジュニパーベリーの見た目から採られたとのことです。

松崎社長
松崎社長
ご覧の通り、ジュニパーベリーはトゲトゲした葉っぱに丸い実(玉)を付けるので、『棘玉』と名付けました。
さっとん
さっとん
そういうことだったんですね。すごい不思議な名前だな~と思ってたんです。

緑化 / 農業 / 酒づくり / 食

自社で森を作られているのだけでも凄いのですが、他にも多岐にわたってSDGsを実践されています。凄い点を全てお伝えしたいのですが、下記に箇条書きにして一例をご紹介させてもらいます。

  • マツザキの森で育てたボタニカルを使用:ボタニカルについて、現在はまだ多くの実をつけていないので他社製品を使われていますが、将来的には自社で育てた素材を100%使用。それによって、素材を取り寄せる運送も無くなりますので環境に優しくなりますね。
  • 「木育体験」:マツザキの森で育てられた樹木は木材にもなりますので、それを使って子供たちに木工を体験できる場所も与える。
  • 自社農園も併設して経営:「みらいほいくえん」「自由学園」などの地元の保育事業と連携して、そこで作られた野菜を給食用に提供されています。また、森で農業体験をする場も提供されてますので、食育など地域の教育にも貢献。
  • 雇用も創出:農園での野菜作りやクラフトジン作りによって雇用が生まれるので、地域の貧困層の減少にも貢献。
  • 水質保全:「棘玉ジン」には森を流れる井戸水が使われています。さらに、蒸留所で出た水は浄化槽を通してまた地面に戻しているとのことで、水質を保全しながら廃棄を限り無くなくす努力をされています。
  • 自社でバーも経営されていてそこでペアリングを提供することによって、川越の魅力を発信。

全てをグルグル循環させていて、SDGsにも。自社のビジネスだけを考えずに、環境を考えながら、さらに地域に貢献されています。素晴らしい企業理念ですね!

ここが凄い棘玉ジンのこだわりポイント

出典:株式会社マツザキ公式サイト

次は蒸留所の様子も含め、棘玉ジンの製造工程やその理念についてご紹介頂きました。こちらは専務取締役の松崎裕大さんから色々とお話を伺いました。

蒸溜設備 製造工程

蒸溜所は、川越のマツザキ中福本店の隣にある倉庫をリノベーションして里山風景に合う様に作られました。木材についてもマツザキの森で育てた木を切り出して使用したとのことです。

ちなみに、写真に写っている甕は、その長いマツザキの長い歴史の中で先人達が使わなくなって地面に埋めたものだそうです。めちゃくちゃ歴史を感じさせますね。

↑こちらが蒸留所の中の様子です。中に入ると木の良い香りがして、蒸留所の雰囲気がとても素敵ですね~。

↑ボタニカルの漬け込み用や、蒸留後のアルコールを保存しておくタンクも所狭しと並べられています。

ジュニパーベリーの浸漬した後のアルコールの様子

まず、ボタニカルをベースアルコールに付ける所から始まります(浸漬)。通常のジンでは1日間漬け込むのが一般的ですが、なんと、棘玉ジンに使われているボタニカルは低温で最長7日間の浸漬をされるとのことです!。

松崎専務
松崎専務
素材の持つ一番良いところを抽出したいので、低温でゆっくり浸漬してます。熱をあまり加えないので長い時間がかかってしまいますが、品質の為に妥協はしたくなかったんです。
三宅製作所のポットスチル

↑次に、銅製の蒸留器(ポットスチル)に入れられて蒸留されます。ここにもこだわりポイントがあり、全てのボタニカルを同時に蒸留するのではなく、それぞれのボタニカルを別々に蒸留します。

松崎専務
松崎専務
それぞれのボタニカルの一番いい部分を抽出したいので、ボタニカルは一つ一つ別々に蒸留しています。浸漬や蒸留の時間、温度はボタニカルによって最適が違うので、別々に進めることに決めました。
嫁
こだわりが半端ない!
松崎専務
松崎専務
蒸留器は日本のメーカーの三宅製作所さん製のものを使っています。海外製も見たのですが、壁の部分が厚くて硬いもので、さらに銅の吸着性も高い日本製の蒸留器に決めたんです。棘玉ジンのクリアさはこの蒸留器を使うことによって生み出されています。

日本国内の大手の蒸留所もその技術を賞賛しているという三宅製作所。三宅製作所のホームページを見ると技術力が凄そうな酒造設備が目に飛び込んできますので、やはり日本の製造の技術も凄いんだな~と改めて実感します。

そして蒸留した際の水蒸気を冷却して濃縮したアルコール(留液)ですが、本当に濃縮した美味しいところだけを抽出したいとのことで、留液の出始め(ヘッド)とで終わり(テイル)は大胆に取り除いて(カット)、本当に美味しい真ん中あたり(ハーツ)のみを使います。その蒸留液をタンクに貯めた後に、ボタニカル毎に蒸留した蒸留液をブレンドして、最終的に棘玉ジンが出来上がります。

松崎専務
松崎専務
棘玉ジンに使うハーツなんですが、どうしてもクリアな味わいにしたかった為、かなりカットしています。そうすると作られる量はどうしても少量になってしますんですよね。

棘玉ジンはとてもリッチにボタニカルが香ってくる味わいなのですが、長い時間の浸漬を大胆なカットを行うことによって、ボタニカルの芳醇な香りがするのですね~。まさに、少量づつしか作られない贅沢なジンと言えます。

テイスティングノート

ジュニパーベリー以外のボタニカルは国産の和の素材が使われています。計6種類が使用されており、柚子、山椒、お茶、桂皮、ショウガといった日本を感じられるものとなっています。

ジュニパーベリーが一般的なジンの数倍使われているということで、口に含んだ瞬間にジュニパーの風味が強く感じられます。ジュニパーフリークのジンラバーにはたまりませんね!その次に、柚子の柑橘感と山椒やショウガのスパイシーさが来ます。最後に鼻に抜けるお茶や桂皮の甘い風味もとても心地よく、全ての風味のバランスが良く配置されています。和を感じられつつ、王道のジュニパーベリーもしっかりしていますので、海外でも評価されうるジンではないのでしょうか!

松崎専務
松崎専務
ジュニパーベリーは一般的なジンの数倍は入れていると思います。奇をてらった様なものではなく海外でも通用するような、ジュニパーベリーを前面に感じられる正統派のジンにしたかったんです。

ストレートでジュニパーの風味を味わうのも良し。トニックで割っても柑橘やスパイシーさがとても良く香ってきますので、ジントニックにするのも良し。ソーダで割って、さっぱりと食中酒として楽しむのも良いですね!

コンペティション受賞歴

去年、2020年8月に発売されたばかりにも関わらず、すでに2021年の2つの品評会で賞を受賞しています。1つは国内のコンペティション、さらに、世界中からジンのエントリーが集まるIWSCにおいても受賞を果たしています。これは、本当に実力があるジンだからこその快挙でしょう!

  • 東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)2021銀賞受賞
  • IWSC(インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション)2021にて91pts、銀賞受賞

最後に

今回の記事では、埼玉県唯一のクラフトジンである「棘玉ジン」を作られている株式会社マツザキさんにお邪魔して、お話を色々聞かせて頂きました。そのSDGsに対しての理念の高さには本当に感服しました。

そして、棘玉ジンが国内産ジュニパー100%使用のジンとして、ジャパニーズクラフトジンにおいて偉業を達成されることを心待ちにしてます!

棘玉ジンは本当に美味しいジンです。気になった方は、マツザキさんのホームページからご購入ください。現在、200mlと700mlが販売されています。

では、今回もお読み頂き有難うございました!

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ABOUT ME
さっとん
嫁と共にクラフトジン沼にハマっているアラフォー料理男子。 2人でジンを買い続けて、家のコレクションはついに200本超え。 カレーも好きで、日々、スパイスカレー作りや、スパイス・ハーブにてついても研究してます。

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